ふぐ料理のお店で「てっさ」「てっちり」「ふぐ刺し」「ふぐちり」という言葉を見て、「全部同じ?違う料理?」と混乱したことはありませんか?
私も以前、大阪の居酒屋でメニューを見て「てっさとふぐ刺し、どっちを頼めばいいの?」と友達に聞いて笑われたことがあります。実は4つの言葉には、日本のふぐ食文化と歴史が深く関わっているんです。
この記事では以下がわかります。
・ 4つの言葉の意味と関係性
・ 「てっさ」「てっちり」の語源と歴史
・ 関西と関東での呼び方の違いと食べ方
「てっさ」「てっちり」「ふぐ刺し」「ふぐちり」の違いを簡潔に

「てっさ」と「ふぐ刺し」は同じ料理で、「てっちり」と「ふぐちり」も同じ料理です。 料理の中身に違いはなく、呼び方が異なるだけです。
簡単にまとめると以下の通りです。
・ てっさ=ふぐ刺し(ふぐの薄造り刺身)
・ てっちり=ふぐちり(ふぐを使った鍋料理)
・ てっさ・てっちり=主に関西(大阪)の呼び方
・ ふぐ刺し・ふぐちり=主に関東や山口県の呼び方
私の友人が大阪の料亭で働いていて、「てっさとふぐ刺しは同じもの」と教えてくれました。大阪では当然のように「てっさ」と呼ぶけれど、関東から来たお客様には「ふぐ刺しのことです」と説明することがあるそうです。呼び方は違っても料理は同じだとか。
では、なぜ同じ料理に2種類の呼び方があるのでしょうか? そこには江戸時代のふぐ禁食令と、大阪ならではの洒落文化が深く関わっています。
「てっさ」「てっちり」の語源:鉄砲の隠語
「てっさ」「てっちり」の「てつ(てっ)」は、ふぐの隠語「鉄砲(てっぽう)」に由来します。 江戸時代、ふぐは毒を持つ危険な魚として食べることが禁じられていました。
文禄・慶長の役により九州に集結した武士の間でふぐ中毒で死亡するものが相次いだため、豊臣秀吉が「河豚食禁止の令」を発布し全国でふぐ食を禁止しました。しかし人々はふぐの美味しさを忘れられず、隠れてこっそり食べ続けていたのです。
そこで生まれたのが「鉄砲(てっぽう)」という隠語です。 ふぐは「たまに当たると死ぬ」=「弾に当たると死ぬ」という銃に掛けて、「てっぽう」の異名で呼ばれるようになりました。「食べ物に当たる」と「銃弾に当たる」をかけた、大阪らしい洒落のきいた表現です。
この「てっぽう(てつ)」に調理法を組み合わせたのが、「てっさ」と「てっちり」です。
ふぐ刺しの「てっさ」は「てっぽうの刺身」、ふぐのお鍋の「てっちり」は「てっぽうのちり鍋」が短くなったものです。
つまり「てっさ」は「てつ(鉄砲)+さ(刺し)」、「てっちり」は「てつ(鉄砲)+ちり(ちり鍋)」という構造になっています。
この隠語はもともと全国で使われていましたが、現在は関西に根付いています。 江戸でも当時禁止されていた「ふぐでも食べようか」を隠語で「てっぽうでも食べようか」と使っていたものの、なぜか関西だけに残りました。
「てっさ」=「ふぐ刺し」とは
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関西にもできてほしいお店✨ pic.twitter.com/m8klVNaod9
てっさ(ふぐ刺し)とは、ふぐの身を極限まで薄く切った刺身料理のことです。 薄造りとも呼ばれ、皿が透けて見えるほどの薄さに切るのが特徴です。
てっさの最大の魅力は食感にあります。弾力があり厚く切ると噛み切ることが難しいふぐの身を、透けて見えるほど薄く切って、コリコリとした食感を楽しみます。この歯ごたえはふぐ刺しならではで、他の刺身では味わえない独特の楽しさがあります。
ふぐ刺しは獲れたてより、少し寝かせた方が美味しいという特徴があります。 天然ふぐの身は2晩寝かせたくらいが美味しさの増すおもしろい食材です。熟成させることでうまみ成分のアミノ酸が増し、噛むほどに甘い旨みが広がります。
薬味と食べ方にもこだわりがあります。 ポン酢と薬味(もみじおろし、刻みねぎ、柚子胡椒)を合わせて食べるのが一般的です。盛り付けは「菊盛り」「鶴盛り」など芸術的な美しさで、視覚でも楽しめます。
切り方には専門の包丁が使われます。 「ふぐ引き包丁」という専用包丁で一枚一枚薄く切り分けます。刺身の柵を切るとは言わずに「引く」という言葉が使われることからも分かる通り、専用のふぐ引き包丁を使って丁寧に一枚一枚薄く切り分けていきます。
私の友人がふぐ料理の板前をしていて、「てっさは技術の見せどころ」と言っていました。薄さと均一さが料理人の腕の差になり、熟練した職人になるほど皿の絵柄が透けて見えるほど薄く引けるそうです。美しい盛り付けも含めて、てっさはふぐ料理の花形だとか。
「てっちり」=「ふぐちり」とは
てっちり(ふぐちり)とは、ふぐを昆布だしで煮て、ポン酢で食べる鍋料理のことです。 白身魚を使った「ちり鍋」の一種で、ふぐの上品な旨みが溶け出しただしごと楽しめる冬の定番料理です。
てっちりはふぐの身を加熱することで、プリプリとした食感を堪能できるのが魅力です。生のてっさとは対照的に、加熱することでふぐの身はプリプリとした弾力が生まれます。
てっちりの具材は豊富です。 ふぐのほか、白菜やにんじん、長ねぎ、春菊などの野菜や、しいたけやえのきなどのきのこ類を加えるため、さまざまな具材のおいしさを楽しめるのが魅力です。ふぐの豆腐への旨みの染み込みも格別で、てっちりならではの楽しみです。
しめの雑炊が特に美味しいとされています。 ふぐのコラーゲンや旨みが溶け込んだだしで作る雑炊は、てっちりコースの締めくくりとして欠かせない一品です。鍋のしめには、ふぐのうまみが凝縮された出汁を使って雑炊を作って食べれば、身も心もほかほかと温まります。
だしには昆布だしが基本です。 あっさりとした味わいのふぐには昆布だしを使ってうまみを引き立てます。複雑なだしよりもシンプルな昆布だしの方が、ふぐ本来の繊細な旨みを引き出せます。
「ちり鍋」の「ちり」とは、白身魚を熱湯でしゃぶしゃぶするように煮て食べる鍋料理のことです。 魚を鍋に入れたときに身がちりちりと縮む様子が語源という説があります。
関西と関東の呼び方の違い
「てっさ」「てっちり」は主に関西(大阪)の呼び方で、「ふぐ刺し」「ふぐちり」は関東や山口県下関などで使われます。
今では東日本でも聞かれる「てっちり」や「てっさ」は、関西での呼び名です。大阪では「たまに当たるを、弾に当たる、当たると死ぬ」に掛けた洒落から「てっぽう(鉄砲)」と呼ばれています。
大阪がふぐ文化の中心であることも、この呼び名定着の背景にあります。 あまり知られていませんが、ふぐと言えば山口県下関が有名ですが、実は消費量では大阪が全国のふぐの6割を消費しています。大阪のふぐ文化の厚みが、独自の呼び名を育てたのです。
山口県下関では「ふく刺し」と呼ぶことがあります。 「ふぐ」が「不遇」「不具」を連想させるとして、縁起のよい「福」にちなんで「ふく」と呼ぶ慣習が下関には根付いています。同じ料理でも地域によって呼び方が変わる、日本語の豊かさを感じさせる例です。
私の知人が関西から東京に転勤したとき、「てっさをください」と居酒屋で頼んだら、「てっさ?」と首をかしげられた経験があるそうです。東京では「ふぐ刺し」の方が通りがよく、同じものを頼むにも地域によって言葉を変える必要があるとか。言葉の違いに文化の違いを感じたと言っていました。
4つの言葉の違いをまとめて比較
4つの言葉の関係を整理すると以下の通りです。
料理の種類は2種類だけです。 ふぐの刺身料理と、ふぐの鍋料理の2種類で、それぞれに2通りの呼び方があります。
ふぐの刺身料理の2つの呼び方は以下の通りです。 てっさ=関西(大阪)中心の呼び方で「鉄砲の刺身」が語源、ふぐ刺し=関東・山口県中心の呼び方で直接的な表現です。どちらも同じ料理で、食感はコリコリ、薄造りで盛り付けが美しいです。
ふぐの鍋料理の2つの呼び方は以下の通りです。 てっちり=関西(大阪)中心の呼び方で「鉄砲のちり鍋」が語源、ふぐちり=関東中心の呼び方で直接的な表現です。どちらも昆布だしで煮てポン酢で食べる鍋料理で、しめは雑炊です。
食べ方の違いは料理の種類(刺身か鍋か)によるものです。 呼び方(てっさかふぐ刺しか)では食べ方は変わりません。
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覚え方・区別のコツ
4つの言葉を覚えるコツは、「語源」と「地域」に注目することです。
「てっ」がつく料理は「鉄砲(ふぐの隠語)」が語源で、主に関西の呼び方です。「ふぐ〇〇」は直接的な名前で、主に関東の呼び方です。
もう1つの覚え方として、「てっさ=てつ(鉄)+さ(刺し)」「てっちり=てつ(鉄)+ちり(ちり鍋)」という語源分解で覚えると、意味と料理が結びつきやすいです。
料理の種類で覚える方法もあります。 刺身料理→「てっさ」または「ふぐ刺し」、鍋料理→「てっちり」または「ふぐちり」です。どちらの呼び方でも料理は同じなので、使う地域に合わせて選べば大丈夫です。
私がふぐ料理店に行くとき、大阪なら「てっさとてっちり」、東京なら「ふぐ刺しとふぐちり」と注文するようにしています。どちらの言葉も通じますが、その土地の文化に合わせた言葉を使うと、なんとなく粋な感じがします。
ふぐを「ふく」と呼ぶ地域は山口県下関です。 「ふく」は福に通じる縁起のよい言葉で、下関ではふぐ刺しを「ふく刺し」と書くお店も多いです。
間違えやすいポイント
最も間違えやすいのが、「てっさとてっちりは別料理、ふぐ刺しとふぐちりは別料理だが、てっさとふぐ刺しは別料理」という誤解です。
てっさとふぐ刺しは全く同じ料理で、てっちりとふぐちりも全く同じ料理です。違うのは呼び方(地域差)だけです。
もう1つよくある間違いが、「てっさはふぐちりより高級」という誤解です。てっさ(ふぐ刺し)もてっちり(ふぐちり)も、使うふぐの種類や鮮度によって価格が変わります。呼び方の違いは料理のランクとは無関係です。
私の友人がふぐのフルコースを初めて食べたとき、「てっさとてっちりって別メニューで頼むの?」と聞いていたことがあります。これもよくある疑問で、フルコースではてっさ(前菜的な刺身)から始まり、てっちり(鍋)→雑炊(しめ)という流れが一般的です。 別々に頼むものではなく、コースの中で順番に楽しむものです。
また、「ちり鍋はふぐだけ」という誤解もあります。ちり鍋は本来、白身魚全般で作れる鍋料理の一種です。タラちり、サーモンちりなど、他の魚でも作れますが、ふぐを使ったものが「てっちり(ふぐちり)」として特に有名になりました。
ふぐの免許についても知っておくと役立ちます。ふぐは毒を持つため、調理には専門の免許(ふぐ調理師免許)が必要です。都道府県によって規制が異なり、自分で調理するのは危険なので、必ず専門のお店でいただきましょう。
よくある質問
Q1:てっさ・てっちり・ふぐ刺し・ふぐちりの一番簡単な見分け方は?
2種類の料理×2通りの呼び方と覚えましょう。 てっさ=ふぐ刺し(刺身料理)、てっちり=ふぐちり(鍋料理)です。てっさ・てっちりは主に関西の呼び方、ふぐ刺し・ふぐちりは主に関東や山口の呼び方です。どちらの呼び方でも料理の内容は同じです。
Q2:てっさはなぜあんなに薄いの?
ふぐの身が弾力があり厚く切ると噛み切れないからです。 ふぐの筋肉質で締まった身は弾力が強く、厚く切ると食べにくくなります。そのため透けて見えるほど薄く切ることで、コリコリとした歯ごたえと旨みを同時に楽しめる独特の食感になります。この薄造りはふぐ刺しならではの技術です。
Q3:てっちりのしめは何が一番?
雑炊が定番です。 ふぐのコラーゲンや旨みが溶け込んだだしで作る雑炊は、てっちりコースの締めくくりとして欠かせません。ふぐの旨みが凝縮されたスープに卵と飯を加えた雑炊は、鍋料理の醍醐味のひとつです。うどんを入れて「ふぐうどん」にする楽しみ方もあります。
Q4:関西と関東でなぜ呼び方が違うの?
もともと全国的に使われていたふぐの隠語「鉄砲」が、関西にだけ残ったからです。 江戸時代にふぐ食が禁じられていた頃、全国でふぐを「鉄砲」と呼ぶ隠語が使われていました。その後、禁食令が解かれても関西だけにこの呼び方が残り、てっさ・てっちりとして定着しました。大阪のふぐ食文化の豊かさが背景にあります。
Q5:山口県下関では何と呼ぶ?
「ふく刺し」「ふく鍋」と呼ぶお店が多いです。 下関では「ふぐ」が「不遇」「不具」を連想させるとして、縁起の良い「福(ふく)」にちなみ「ふく」と呼ぶ慣習があります。山口県下関はふぐの一大産地で、ふぐ料理の聖地として知られています。
Q6:てっちりのポン酢の薬味は何が合う?
もみじおろし・刻みねぎ・柚子胡椒が定番です。 もみじおろし(大根おろし+赤唐辛子)はポン酢に辛みとうまみを加え、刻みねぎは爽やかな風味を加えます。柚子胡椒を少量加えると、柑橘の香りと辛みがふぐの上品な旨みを引き立てます。これら薬味でポン酢の味変を楽しむのも、てっちりの醍醐味です。
Q7:ふぐ料理でほかに有名なものは?
ひれ酒・白子・唐揚げが人気です。 ひれ酒はふぐのひれを焼いて熱燗に入れた一品で、香ばしい香りと旨みが特徴です。白子(精巣)はとろりとした食感と濃厚な旨みが絶品で、冬限定の希少部位です。唐揚げは揚げたてをレモン汁で食べる定番で、てっさ・てっちりと合わせてふぐのフルコースで楽しめます。
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「てっさ」と「ふぐ刺し」は全く同じ料理で、呼び方が異なるだけです。 ふぐの身を透けるほど薄く切った刺身料理で、コリコリとした独特の食感が魅力です。てっさは主に関西(大阪)の呼び方で、語源は「鉄砲(ふぐの隠語)の刺身」です。
「てっちり」と「ふぐちり」も全く同じ料理で、呼び方が異なるだけです。 ふぐを昆布だしで煮てポン酢で食べる鍋料理で、プリプリの食感としめの雑炊が格別です。てっちりは主に関西(大阪)の呼び方で、語源は「鉄砲(ふぐの隠語)のちり鍋」です。
てっさ・てっちりという呼び名の背景には、江戸時代のふぐ禁食令と大阪の洒落文化があります。 ふぐの毒と鉄砲の弾を「当たると死ぬ」でかけた隠語から生まれた言葉で、今も関西を中心に使われ続けています。関西では「てっさ・てっちり」、関東では「ふぐ刺し・ふぐちり」と使い分けると、その土地の文化を感じながらふぐ料理を楽しめます!

